KISWEC 通信 No.4 (2004年1月31日発行)

ブランドの価値と国民性について
〜ある授産施設の取組みから学ぶ〜
京都市みぶ障害者授産所 所長 高木 進


 去年の夏,チューリッヒでの社会福祉関係の会議に参加するため理事長とともにスイスを訪問した。チューリッヒ行きの飛行機にのるため,ウイーン空港の連絡ロビーに座りながら通りすぎる人々を観察していると面白いことに気がついた。日本人は一様にブランド品で身を固めている。それも集団でである。一方,同じ集団でも中国の人は着るものや持ち物が質素である。

 ヨーロッパやアメリカの人々は総じて夫婦での観光旅行かビジネスマンが多く,服装や持ち物も個性的である。日本人の持つようなブランド品は殆ど見当たらない。

 そんなことを分析して喜んでいる間にフライトとなった。
チューリッヒでの会議も無事すみ,スイスの東,ドイツと湖を経て接しているロマンスホーンという町にある施設に向かった。汽車の中で注意を引いたのが,若い娘さん方が持つショルダーバックである。グッチやヴイトンに比べると古着屋の隅においてあるような品物にしか見えないのだが,ブランド品として扱われていた。

 翌日,法人関係の牧師さんの案内でBRUGGLIという障害者の授産所を見学した。
 驚いたことに,先ほどのショルダーバックはここの授産製品であった。さらに驚いたのは,この原材料は全てリサイクル部品で,本体はトラックの幌,ベルトは車のシートベルトという具合で日本では考えられないことである。

 同様のリサイクル製品として他に財布やハンドバックが展示してあった。リサイクル商品だから高々1,000円位だろうと財布を注文したところが7,000円もし,断るわけにもいかず多大の出費となった。原料の価格とは関係なく,リサイクル製品であること,そして同じ品物は2品とないという意味でのブランドの値打で,我々の考えるブランドの価値観との違いに感心した。

 スイスの各都市を訪問し,山並みの美しさに加え,石造りとはいえ,何百年も使用している建物や町並みの美しさに心をうばわれた。
 環境よりも経済,将来よりも今を大事にする使い捨て文化の国と異なり,環境と未来を大事にするヨーロッパ諸国の国民性を思いながら,リサイクル商品がなぜブランドとして珍重されるのかが理解できた。

 当施設では,リサイクル商品の他,特許をとっている製品も製造されており,海外にも輸出されている。また,民間企業も施設との競合をさけ,技術について互いに補完しあっているという。 授産のあり方について,大なる示唆を受けた旅行であった。




京都国際社会福祉センターからのお知らせ

 「LD(学習障害)児を抱える家族・関係者のためのコース」を計画中

最近、教育・福祉の現場でLDに関する研修会や講座が開かれることが多くなってきています。
私どもは、専門家に治療を頼ることも大切ですが、LD児を抱える家族が自らプログラムをたてるヒントを得て、それぞれのご家庭で努力することが大切であると考えています。そのために、近い将来、親と関係者を対象としたコースを開講するための準備を進めています。詳細が決まり次第、改めてお知らせ致します。


 「日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙」の発刊について

わが国はいまだに乳幼児期の言語発達とコミュニケーション発達を評価する検査が標準化されていませんが、この度、長崎シーボルト大学綿巻徹・神戸大学小椋たみ子両先生によりアメリカで開発され、英語圏以外でも各国で広く用いられているマッカーサーコミュニケーション発達質問紙が標記名称のもと日本で標準化され、当センターから発刊されることになりました。
「新版K式発達検査」をさらに補足する役割を果す意味もあって、K式と共に全国に頒布します。詳細については、当センター発達研究所にお問い合わせ下さい。




アゴラ【2】― 横大路福祉学園より ―


 京都市横大路学園は京都市の資源ゴミの分別作業を行っている知的障害者通所授産施設です。収集されているのは、空き缶・空き瓶・ペットボトルの3種類です。

 開所して16年が経ちます。開所当時は、空き缶のみの収集分別だけだったので比較的ゆったりした作業でした。その後徐々に収集が拡大され、作業も忙しくなり、アルミ缶がプレス機よりあふれ出た時期もありました。「アルミ缶の海で泳いでいた」と表現する人もいます。当然、学園の収入もうなぎのぼり。昔を知らない私には想像もできない光景です。今の私は、日々ペットボトルの海を泣きながら泳いでいます。

 このペットボトルの出現が、横大路および私の運命を大きく変えてしまいました。皆さん,コンビニの飲料水のコーナーでアルミ缶に入った飲料水を捜して見てください。ジュース類は、ほとんどペットボトルです。それに輪をかけたように,私の小さい頃には考えられなかったお茶・水と言ったものが販売されています。これもペットボトル。軽くてふたを閉める事ができるからといって重宝がられていますが、これが悪の根源です。利用者(園生)にとっては分別作業の効率は悪くなり、更にアルミの産出量(?)は激減し、懐は淋しくなる一方です。

 さらに難儀なことに、アルミ缶の引き抜きが公然と行われています。アルミ缶は1キログラム80円前後で取引されています。現在京都市の資源ゴミ回収日は水曜日です。この日の朝にはトラックで大胆に回収する人、更にはリヤカーを引っ張って抜き取る人や自転車で前が見えなくなるほど乗せていく人が多く見られます。

 見通しのない不況の中で、ホームレスの人々にとっては安定した収入源となっているようです。現在では、子ども会や学校での収集も始まっているようです。

 京都市の資源ゴミの回収を前提に成り立っている当学園にとって、アルミ缶の回収率が減ることは死活問題です。

 ペットボトル。見るだけでもいやになります。 
 「あぁ一度でいいからアルミの海で泳いで見たい」


 アゴラとは,古代ギリシャにおける都市の広場のことで,そこで市民は自由に語り合い,新しい世界を築いていったものと考えます。
 アゴラにちなみ,法人の各施設の話題を,一職員の立場で取り上げています。




編 集 後 記


 第3号を発行してから早や3か月,次号は「授産のあり方について」検討し,国際性,収益性,自立性などをキーワードに新機軸を打ち出し,全国に発信しょうと各施設の若手で授産検討会を立ち上げたが,将来に向けての具体的提言をまとめるところまでいかなかった。

 今号はスイスのある授産施設の取組みの紹介のみとし,年もあらたまったことから,法人本部の事業である,京都国際社会福祉センターの新年度事業の特集号とした。

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